膨大な疫学データが「予防医学」を実現させる
私の研究室では、ちょっと難しい言葉ですが 「疫学(えきがく）」という方法を用いてさまざまな研究を行っています。例えば、「このような体質の人が、このような生活習慣だと、脳はこのようになる」 ということを明らかにしていきます。
この「疫学」というのは大きな集団からデータを集積し、そのデータを統計学旳な手法を用いて解析して、疾病の原因やその傾向を明らかにするものです。 科学の分野では、ほんの20人くらいのデータから一般的にこうしたことが考えられる可能性がある——と言っても、あまリ説得力を持ちません。やはリある程度の大人数のデータを集めて、そこから見えてきたものこそ、よリ真実に近いということができます。
私たちの研究所では現在、多くの方々のご協力をいただき、5歳のお子さんから80歳を超えるご高齢の方まで、数千に及ぶデータを集積しています。さらに東北大学では、東北メディカル.メガバンク機構という大きなプロジェクトが動いており、そのデータの数は、数年後には15万人にまでに及ぶ予定です。
疫学についての成果ですが、「どういう人が、どういうことをすると、どういうふうになるか」、さまざまなことが明らかになってきました。体質についても、いまでは遗伝子レベルまでが対象になリ、「こういう遗伝子を持った人は、こういう生活習慣にすれば、脳をこのようにすることができる」ということも明らかになってきています。ですから、この疫学データは、認知症など脳の病気を未然に防ぐことができる「予防医学」にも大きな力を発揮するようになってきたのです。
